ふるさとおこしプロジェクト

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SAKU美SAKU楽

MAGAZINE ふるさと図鑑

水彩画家・コミュニケーションアーティスト おかだ美保

SAKU美SAKU楽|水彩画家・コミュニケーションアーティスト おかだ美保

【前編】
感動を色で表現
アートを通じてふるさとの魅力を伝える

岡山県北エリアをめぐる観光列車「SAKU美SAKU楽」。津山線の沿線をめぐって描いた6枚の水彩画が、中吊りポスターとなり車内を彩っている。手掛けたのは岡山市建部町出身のおかだ美保さん。きりっと勇ましい岡山駅の桃太郎像や、夜空を見上げる亀甲駅舎のユーモラスな亀の表情など、ストーリー性を感じる絵と美しい色使いに感性が刺激され、旅行気分を高めてくれる。

3つの色を通して
人と一緒に楽しむアート

おかださんは建部町福渡地区で生まれ育ち、現在は京都市と建部町の二拠点生活を送る。保育園の頃から絵を描くことに夢中で、将来は絵描きを目指していた。服飾メーカーで宣伝デザイナーとして勤務した後、百貨店内に親子のコミュニケーションスペース「ミホランド」を、17年間に渡りプロデュース。その後、京都市を拠点に水彩画家として活動。筆ペンや4色ボールペンなどを使って身近なものを簡単に描く「手帳スケッチ」をテレビ番組で紹介したことも。画家として活動していくうちに出会った「色の3原色」に感銘を受け、1999年からは絵を描くことの楽しさを伝える「いろあそび」の講師を各地で始める。

赤・青・黄の3色の絵の具を使い、水で湿らせた画用紙に指で直接描くいろあそび。五感を使って自由に描くことでたくさんの色が生まれ、自分の色と出会えるという。対象は幼児から高齢者まで。「みんな本当にイキイキして取り組みますよ。色の変化に面白がって驚いて夢中になるの。上手に描くわけではなく心の放出です。その姿を見ているうちにアートは人を幸せにするものだという実感が強くなりました」。今でも保育園や幼稚園などでいろあそびの魅力を伝えている。

それぞれの地で感じた光や色
風景を切り取る

2021年の夏頃、ふるさとの津山線に観光列車が走る計画があるので津山線沿線の水彩画を描いてほしいと声が掛かった。常に全力で現場に飛び込み、そこで感じたものを描くのがおかださんのスタイル。沿線でしか出会えない特別な風景、美しいものを表現したいと、年末に友人の車で7時間かけて全ての駅とその周辺をスケッチして回った。

「出来上がるまでにはさまざまな出会いや感動がありました」。中でも印象深かったのは、岡山駅の桃太郎像。今まで何度も岡山駅に足を運んだが、じっくり眺めたことはなかった。ところが、改めて見てみると実にかっこいい。あらゆる角度から桃太郎像をスケッチして、本番に臨んだ。「ここからスタート!という感覚でしたね」。

ふるさとでもある「福の町たけべ福渡」に向ける思いは格別だ。「福渡は、列車が鉄橋を走っている絵を描きました。岡山駅から乗車してこの鉄橋を渡ると、福渡駅。93歳の母が待つ家に到着します。京都に向かうときは出発時刻に合わせて母が列車に手を振って見送ってくれる。『いってきます』『ただいま』という思いがいつもあります」。それぞれの地で感じた色や光、風、空気感を躍動感あふれるタッチで表現している。

SAKU美SAKU楽/車内吊りポスター 6種

【後編】
観光列車がつなぐ
ふるさとの絆

2022年7月、SAKU美SAKU楽が運行をスタート。実際に乗車してみると、知っているはずの景色の中に新しい発見があり、地元の良さを再確認できたという。「牧山周辺の景色は前から好きでしたが、車内アテンダントの案内を聞いてさらに魅力を感じるようになりました。列車に乗車したときは毎回、車内から見下ろす写真を撮っています」。

アートを通じてふるさととの交流や関わりも深まっている。SAKU美SAKU楽の運行に合わせ、ポスターの原画や自然豊かな建部町の日常風景を長年に渡り描いた水彩画の展示会「おかだ美保水彩画とスケッチ展」やいろあそびのワークショップを開催。子どもたちが3つの色を使って福渡駅で自由に描いた絵はウェルカムアートとして駅舎待合室に掲示され、観光客を楽しませた。また、SAKU美SAKU楽のオリジナルグッズなどを手がける、フォトグラファー・アクセサリー作家オカダノエさんとの二人展も開催した。

2022年7月にたけべ八幡温泉館内にて開催された「おかだ美保水彩画とスケッチ展」の告知チラシ。

作品展では SAKU美SAKU楽の車内吊りポスターの原画などが展示され、会場にいろどりを添えた。

左/子どもたちとともに描いた福渡駅のウェルカムアート  右/福渡駅の待合室にアートの息吹が吹き込まれた(画像提供/おかだ美保)

建部町にある自家焙煎珈琲豆の専門店「Sunny Day Coffee(サニーデイコーヒー)」とコラボレーションした商品も生まれている。「さくら旅ブレンド」はSAKU美SAKU楽をテーマにしたドリップバッグコーヒーで、おかださんはパッケージをデザイン。桜が舞う清流と旭川を渡る列車を水彩画で表現した。「私にとってアートはコミュニケーションの一つ。人とつながり、観光列車とつながり、流れにのってここまできました。大切なふるさとでアートの仕事ができたことは幸せなこと」と微笑む。

「SAKU美 SAKU楽の旅が幸せでありますように」と願いを込めてデザインした「さくら旅ブレンド」のパッケージ(右側)。

しあわせ橋と満点の星空のスケッチをもとにして描いた「しあわせ橋ブレンド」。

鉛筆1本で絵が描ける
旅を楽しむスケッチノート

これまで講師として幅広く活躍してきたおかださん。「絵が苦手、どこから描けばいいのか分からないという声をよく聞きますが、○(丸)△(三角)□(四角)で簡単に描けてしまうんです」。そこで、岡山駅前広場に移動し桃太郎像を描いてもらうことに。おかださんは真剣なまなざしで像を見つめ、ささっと鉛筆を動かしていく。画用紙には3つの図形が組み合わさって描かれ、輪郭線と色を添えるとおなじみの桃太郎像が完成した。

いつも自然体のおかださん。トレードマークの帽子をかぶってスケッチをする。
「コロナで生活が一変したとき、道端に咲く一輪の花を見て心が和んだ。当たり前のように思っていた日常の中に宝物のような景色があることを実感した」と話す。

今春、アートをもっと気軽に楽しんでほしいと企画・制作したのが「旅のスケッチノート」だ。これまで培ってきたノウハウを結集し、鉛筆1本で簡単に絵が描けるテクニックを紹介。SAKU美SAKU楽で旅をしながら出会ったものをスケッチし、思い出として持ち帰ることができる。「絵の苦手な友人が、これを見ながら描いてくれました。〇△□で簡単に絵が描けるので、列車の中でぜひ楽しんでほしい」。絵を描くことだけでなく、チケットを貼ったり、スタンプを押したり、らくがきをしたりと旅の思い出ノートとしても楽しめる一冊だ。
アートを通じて多くの人に笑顔になってほしいと、おかださんは今日も制作活動を続ける。

(2023年5月取材)

普段絵を描かない人でも〇△□で簡単に絵が描ける。友人の森本さんが描いてくれたスケッチ。

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