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蒜山ショコラ
ヒルゼンミルキー佐藤 徹さん ×
ジェイアールサービスネット岡山・
JR西日本岡山支社ふるさとおこし本部
JR PREMIUM SELECT SETOUCHI「蒜山ショコラ」|ヒルゼンミルキー 佐藤 徹さん × ジェイアールサービスネット岡山・JR西日本岡山支社ふるさとおこし本部
チョコレート×ドライフルーツで伝えるせとうちの魅力
「蒜山ショコラ」
JR西日本岡山支社では「ふるさとおこしプロジェクト」の一環として、地元企業や生産者と協働し、地域の魅力を伝える商品「JR PREMIUM SELECT SETOUCHI」を企画・開発しています。その中の一つ、「蒜山ショコラ」は2018年度に6カ月で5万5000個を売り上げる大人気商品となりました。
チョコレート製造を行うヒルゼンミルキー、JR西日本岡山支社、駅ナカショップを運営するジェイアールサービスネット岡山、林源十郎商店をプロデュースするなど地域活性化に取り組む暮らしき編集部が知恵を出し合い開発した「蒜山ショコラ」。携わったメンバーにお話を伺い、開発秘話に迫ります。
チョコレート×せとうち産ドライフルーツ
「蒜山ショコラ」は、クリーミーなチョコレートに岡山産の白桃や、せとうち産のレモン、オレンジなどのドライフルーツを散りばめた贅沢なショラバー。商品開発は2018年6月に開催した「第10回ふるさとあっ晴れ認定」。「白桃リキュール生チョコレート」でふるさとあっぱれ認定を受けたヒルゼンミルキーのチョコレートを食べたことをきっかけに始まったといいます。
岡山県真庭市で幅広い年代に親しまれるチョコレートづくりを行うヒルゼンミルキー。「そのチョコレートがとても美味しかった。チョコレートを使ってせとうちの魅力を伝える商品はできないだろうかと企画がスタートしました」とJR西日本岡山支社 ふるさとおこし本部の大石 将司さんが振り返る。
チョコレートとドライフルーツを組み合わせるアイデアは、ヒルゼンミルキーで販売されていたチョコレートにイチゴのドライフルーツが1つのっているホワイトチョコレート。「色んなドライフルーツを全面に敷き詰めたら見た目にもかわいく、おいしいはず。果物が豊富な岡山・せとうちのアピールにもなるのでは」。
チョコレートとドライフルーツ。この2つの素材を組み合わせで、地域の魅力を伝える商品作りがスタートしたのです。
試行錯誤を重ねて理想を形に
せとうちの魅力を発信するお土産として、数ある商品の中からお客さまに手に取ってもらえるにはどうすれば良いか。おいしくて喜んでもらえるお土産づくりを思案し、パッケージデザイン、サイズ、販売価格、そして、さまざまな素材との組み合わせる試作を何度も重ね、開発を進めていきました。
「駅での販売がメインになるので、地域色のあるお土産で、スマートフォンくらいコンパクトなものにしたかった」そう語るのはジェイアールサービスネット岡山の岡 純一さん。ヒルゼンミルキーの佐藤 徹さんは「大事にしたのはチョコレートとドライフルーツの味のバランス」と話します。「チョコレートとドライフルーツを一緒に食べたとき、チョコばかりが勝たないよう、フルーツの味わいが引き立つように何回も厚み調整しました。厚みが1㎜でも違うと、口どけや味が変わるんですよ」。
チョコレートの味をビター、ホワイト、抹茶の3種類にし、食味、食感、香りなどを考慮し、カカオの配合率や組み合わせるドライフルーツの種類も何度も変更、試作と試食を繰り返して理想の味を追求したといいます。「最終的にビターチョコレートはカカオ55%で柑橘系ドライフルーツの甘酸っぱさを生かしたものに、ホワイトチョコレートは通常より砂糖を少なくして、ドライフルーツの甘さや香りを引き立てるものにしました」。
一つひとつ自然の味わいを楽しんで
せとうち産のドライフルーツは、三宅商店カフェ工房(岡山県倉敷市)に依頼。カフェジャムづくりで繋がってきた農家の方々をはじめ新たな果物の仕入れ先の確保、そしてドライフルーツ製造に至るまでの管理を担当する古作泰宏さんは「当時はドライフルーツにする経験がなく、まさに手探りの状態で始まった」と言います。
「季節が限られる果物をある程度の量を安定して仕入れることができるか。加工、保存、自然のものゆえに仕入れも味も色も量も均一ではない果物との日々が続きました」。
そして完成した数々のドライフルーツを使ってチョコレートを作っては食べてみる。また作っては食べてみる。ひたすらその繰り返しだったといいます。試作を重ねた結果、フルーツは白桃とオレンジ、キウイ、イチゴ、レモンの5種類を使うことに。課題はさらに続き、今度はドライフルーツの厚み。どれくらいがベストなのか、乾燥具合の微調整から、果物そのもののプレーンな味がいいのか、シロップ漬けにして香りを引き出すのが良いのか、あらゆる角度から試作を繰り返して完成を目指しました。
一つひとつ形や大きさが違うドライフルーツ。それらの形を生かし美しく並べる工程を、ヒルゼンミルキーではすべて手作業で行っています。「ドライフルーツの並べ方も初めのうちは個人差があって、統一するのが大変でした」と佐藤さん。「形や大きさが同じであれば自動的に並べることもできますが、自然のものだから形も大きさも違う。チョコレートを型に流すと瞬時に固まるので、素早く並べなくてはいけません。大変な作業ですが、だからこそ一枚ずつ違う模様の味わいあるチョコレートが出来上がるんですね」。
「いいものをお客さまにお届けしたい」という目標に向かって、企画から製造・販売まで各専門分野の情報やノウハウを結集して完成したチョコレートは5種類。佐藤さんは「チョコレート製造を始めて35年になりますが、携わったメンバーで情報を共有しながら、愛着のもてる商品が生まれたという実感がありました」と話します。
ただ、これまでにない商品なのでどれだけ売れるかはまったく未知数。ジェイアールサービスネット岡山の岡さんは、「駅ナカショップのチョコレートの売上から予想すると、当初の販売計画は1日10個。でも、実際に売り出してみたらとんでもなかったんです」と振り返ります。
2018年12月に発売を開始した蒜山ショコラは、予想を大幅に超えた売り上げで当初から売り切れ続出となりました。「びっくりしましたよ。メンバーの誰も予測してなかったですから(笑)」と一同。見た目も華やかなチョコレートはSNSの投稿などで一気に拡散、岡山駅の中でも上位に入る人気商品となっていきました。
ヒルゼンミルキーの佐藤さんもSNSを始めたといいます。「最初は見せてもらっていたのですが、購入してくれた皆さんが褒めてくださっているのが嬉しく、スタッフに紹介したり、“いいね”ボタンを押してみたり。すると、ある日突然『製造者本人から“いいね”がもらえました』とのコメントが。僕はあまり仕組みを理解していなくて、情報が向こうに届くとは思っていませんでした(笑)」。
蒜山ショコラ 2年目の挑戦
発売2年目を迎える今秋、ヒルゼンミルキーは新たな設備を導入して、製造ラインを増やし安定供給を目指します。「昨年度は売切れなどで、お買求めいただけなかった皆さまにご迷惑をおかけいたしました。今年は多くの方々に手にしていただけるよう、尽力します」(佐藤さん)。
JR西日本岡山支社ふるさと本部の遠藤茂仁さんは言います。「みんなで知恵を出し合って開発した蒜山ショコラを全国の人へお届けしたい。鉄道ネットワークや都市部の販路を持つメリットを生かした商品の知名度向上や、全国へ向けた販路を開拓して、より多くの皆様へせとうちの魅力を発信していきたいです」。
「蒜山ショコラ」の今シーズンの販売は2019年11月1日からスタート。駅ナカショップ以外にも、百貨店などでの販売が始まっています。せとうちの風や香りを感じるショコラバー。旅のお土産はもちろん、親しい人への贈りものや自分のご褒美にも。
(2019年11月取材)
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