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真魚市と伊里周辺の町並み

MAGAZINE あの駅この駅

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【あの駅この駅】 赤穂線・伊里駅

真魚市と伊里周辺の町並み

「あの駅この駅」では、列車で訪れることのできる魅力ある場所、沿線のまだ広く知られていない地域の魅力を発信しています。今回は、赤穂線「伊里駅」から徒歩20分の「真魚市(まないち)」と、伊里周辺の町並みを観光ボランティアガイドの方と一緒に歩いてめぐる「真魚市ウォーキング」をご紹介します。

真魚市ウォーキングへの参加方法はこちら

景色を楽しみながらのんびりまち歩き

JR赤穂線は岡山市の東岡山駅から兵庫県相生市の相生駅まで、瀬戸内海に沿って走る全長58.4㎞のローカル線。沿線には日本刀の産地として栄えた長船(おさふね)や、日本六古窯の一つ、備前焼の産地・伊部(いんべ)など古い歴史と文化が残る町があり、見所の多い路線です。

JR岡山駅を出発し、吉井川の鉄橋を渡ると車窓には田んぼや山など長閑な風景が続きます。備前焼の登り窯の煙突が立ち並ぶ町並みを過ぎ「伊里駅」に到着。備前市観光ボランティアガイドの片山伸栄さんが出迎えてくれました。
ここからまず、穂浪(ほなみ)漁港を目指して歩きます。歩道の横を流れる伊里川の川幅は広く、ゆるやかな流れ。「伊里川下流は潮の満ち引きで水面の高さが変わります。淡水と海水が入り混じるのでハゼなどを釣りに来る人も多いですよ」と片山さん。朝の日差しをいっぱいに受けた川面はきらきらと輝き、実にのどかな風景です。

鮮度の良い魚と旬の食材が魅力の「真魚市」

伊里駅から歩いて20分ほどで穂浪漁港に到着。毎週日曜の午前中に開催される「真魚市(まないち)」は、1999年7月にスタート。一番の魅力は市場に並ぶ魚の鮮度が抜群に良いこと。早朝、漁を終えた漁船から次々と鮮魚が運び込まれます。魚にその場で値段をつけ、真魚市ならではの価格で販売。市場には発泡スチロールの箱一杯に詰められたママカリやレンコダイ、イイダコなど、水揚げされたばかりの旬の魚介類が並びます。大きなブリとカツオも迫力満点。イカ焼きやアナゴ焼きが香ばしい香りを漂わせています。

「毎週のように来てくださる方や、お土産でもらったら美味しかったからと関西方面から買いに来てくださるお客様もいらっしゃいます。口コミで評判が広がって、東は京阪神、西は広島から毎週たくさんのお客様が来られますよ」とスタッフの河崎登喜子さん。

伊里漁協共同組合専務理事の川邊一平さんは、「魚は地元漁師をはじめ、小豆島や兵庫県姫路沖、家島(えじま)の漁師たちから運び込まれます。11月からは殻付き牡蠣の美味しい時期。牡蠣詰め放題が人気」と言います。また、真魚市では、名物の焼きアナゴやイカ焼きの他、てんぷら、野菜、果物、パン、備前焼、刃物など約30店舗からなる「MANAショップ」も併設。地元の出店者が軒を連ねます。年間を通してさまざまな催しものがあり、7月には「真魚市周年感謝フェア」、12月には「歳末真魚市」、1~3月には「殻付きカキの詰め放題」を実施。「真魚市に行けば食べたいものがたくさんそろっていることが喜ばれている理由だと思います。ぜひ、足を運んで市場ならではのにぎわいを楽しんでください」。

「真魚市で瀬戸内海の新鮮な季節の魚介類を楽しんでもらいたい」と話す、伊里漁協共同組合専務理事の川邊一平さん。

風光明媚な片上湾の見晴らし

賑やかな真魚市を後にして住吉神社へ。お参りをすませ、正宗白鳥(まさむね・はくちょう)の生家跡に到着。正宗白鳥(1879~1962)は、明治大正期に一世を風靡した自然主義文学の作家。顕彰碑にはこの地を題材に綴られた小説「入江のほとり」の一節が刻まれています。“入り江は鏡のようで”というのは正宗が故郷の片上湾の様子を現しているのだそうです。

高台に建つ正智院に向かって、一段一段上ることで厄を落とす「女厄坂」と「男厄坂」があります。境内に着き、港を見下ろすと、光り輝く海に島や牡蠣筏(いかだ)が浮かぶ素晴らしい眺め。爽やかな風が階段を登りきった体を癒してくれます。澄み切った空気の中、鳥の鳴き声を聞きながら山道を歩き、正宗家の菩提寺になっている柳青院へ。町並みを一望できる門前は、映画のロケ地にもなっています。

昔の町の風情を感じながら歩く

続いて訪れたのは、坂を下った先にある「正宗文庫」。昭和11(1936)年、正宗白鳥の弟・正宗敦夫(1881~1958)によって設立。敦夫は生涯備前市穂浪の町に住みながら、国文学者・歌人として活躍。正宗文庫は自宅敷地内に所蔵する書物を保存するための書庫で、片山さんが建設当時のエピソードを語ってくれました。現在は正宗敦夫の孫で、備前焼作家の正宗千春さんが管理されているそうです。片山さんは「建物の佇まいが素敵ですよね。こんな素晴らしいところがあるということを、もっと多くの方に知っていただきたい」と話します。

国道250号から1本奥にある旧道には、昔の町の風情が残っています。「もとは遠浅の海だったところ。前がすぐ海で裏が山。狭いところに家が密集している町並みは日生とよく似ています」。昔の地形を想像しながら歩くのもおもしろいもの。地元に古くから伝わる民話や、ウォーキングの道中に咲く草花のことなど、片山さんの話題は尽きません。

知らなかった町の魅力を発見

最後の立ち寄りスポット「井田(せいでん)跡」は江戸時代、350年前に造られたもの。特別史跡「旧閑谷学校」と同じく、日本遺産認定「近世日本の教育遺産群」の構成文化財の一つ。寛文10(1670)年、備前岡山藩主・池田光政が重臣の津田永忠に命じて干拓地を新田に造成する際、中国周時代(紀元前1,100年頃)の井田制を適用しました。南北に長い長方形の上井田と正方形の下井田があり、下井田は閑谷学校の教育を守るため学校田に割り当てられたといいます。「後楽園にも100分の1規模の井田が設けられていますが、こちらが本物です。このような遺構は国内ではここだけ。大変貴重なものです」。

井田制とは全体を「井」字形に9等分した区画の中央に公田を配置し、周りの8つが私田で、中央の公田の収穫を租税として納めるもの。税率約1割の理想的租税制度といわれる。

井田碑の隣には「井田の模型」が造られ、先人の偉業を伝えている。模型の縁石には井田桶門の石材を使用。

井田跡の横にある遊水池を覗き込むと亀やメダカの姿を見ることも。「ここはちょっと注目してほしい場所です」と片山さんが指さす先には、下井田の南東の角を示す積石が。花こう岩を切り出したもので、350年も前に積まれた歴史ある石です。説明してもらわなければ通り過ぎてしまう場所も、ガイドとの会話を楽しみながら散策すると、知らなった町の魅力が見えてきます。

伊里駅から始まる、約3時間半のまち歩きを楽しむ「真魚市ウォーキング」は2021年11月7日(日)から12月26日(日)の、毎週日曜日に開催。

(2021年10月)

真魚市ウォーキング
参加者募集中(要予約)

イベント
真魚市ウォーキング
開催日時
2021年11月・12月の毎週日曜日
※都合により中止となる場合がございますので事前にお問い合わせ下さい。
参加方法
予約制(1週間前までにお電話にてご予約の上ご参加ください)
ご予約
備前市 産業部 文化観光課 観光推進係
Tel 0869-64-1832(平日 8:30〜17:15)土・日・祝 休み
タイムスケジュール(目安)
岡山駅からご乗車の場合は7:21発
8:15
伊里駅到着
ツアーガイドさんと一緒に真魚市に向かいます
8:40
真魚市到着(自由散策)
9:30
伊里周辺のガイドさんおすすめの場所を巡ります
12:00
伊里駅到着・解散
伊里駅発岡山方面行き12:02に乗車できます

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