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KURASHIKI

MAGAZINE ふるさと図鑑

倉敷おからクッキー

倉敷おからクッキー|有限会社 もとや

からだ想いの
おからクッキー

「倉敷おからクッキー」は、名前のとおり豆腐製造の副産物である「おから」を使ったヘルシークッキー。低カロリーで栄養が豊富なため、ダイエットをする人や健康志向の人から人気があり、リピーターが多いという。国産大豆100%の生おからや地元産食材など素材にもこだわり、フレーバーのラインアップは60種類以上。倉敷おからクッキーを製造するのは、倉敷市児島地区にある有限会社 もとや。おいしさと身体へのやさしさを両立し、同時に日本の伝統文化である豆腐製造業の継承にも力を注いでいる。

低カロリーで栄養豊富な
ヘルシークッキー

倉敷おからクッキーは1枚が約25kcalで低カロリー。タンパク質や食物繊維などが豊富でダイエットや健康を気にする人を中心に人気を得ている。カロリーを気にする大人の「置き換え食」として、1袋の半分(クッキー約10枚)を食事がわりに食べると、1食あたり約250kcalとなり、カロリーを抑えながら満腹感も得られる。添加物の使用を最小限に抑えて素材にもこだわったクッキーは、子どものおやつとしても人気だという。

3食のうち1食は、おからクッキー1食分を主食代わりにし、サラダと汁物とともに食べるという人も。

商品のバリエーションが豊富なことも特徴で、2025年9月の取材時点で65種類。人気なのは、プレミアム3種(プレーン、チョコ、ココア)。これは販売を開始した当時からのフレーバーで、ロングセラーとなっている。

さらに、市内のコーヒーショップや、同じ児島で生産される坂本織物の「倉敷真田紐」をギフトボックスのリボンに見たてた児島の魅力をたっぷりと感じられるギフトセット商品も展開。地元商品とのコラボレーションも積極的に行なっている。

オフィスにずらりと並ぶ圧巻のラインアップ。

相性のよいさまざまな素材と組みあわせて、色とりどりのおからクッキーを開発している。

販売当初からのロングセラーがこちら。3つの味が楽しめるアソートパック。

米粉をつかったサクサクとした食感のシリーズも。

55種類を記念して作成したカタログ。2025年9月時点で65種類となり、さらに10フレーバーが追加された。

試行錯誤を経てたどり着いた
「おからクッキー」誕生までの道のり

1955年創業の「もとや」は、2025年現在、2代目・福本眞一郎(ふくもと しんいちろう)さんが代表を務めている。現在の主力商品「倉敷おからクッキー」誕生までには、長い試行錯誤の時期があった。

かつて同社は岡山県内でアパレル店を5店舗展開していたが、バブル崩壊やデフレの影響で事業は厳しくなり、新たな方向性を模索。長年の常連客を「最大の財産」と捉え、その人たちに本当に喜ばれる事業を目指した。
ちょうどその頃、家庭向けにパソコンが普及し始め、常連客からも「使い方がわからない」という声が多く寄せられた。そこで福本さんは、設置から操作指導、アフターサポートまでを自ら行い、パソコン教室やホームページ制作へと事業を拡大していった。

ある日、ネット記事で「おからクッキー」を知り、「これなら自分たちにもできる」と直感。知人の豆腐店から生おからを仕入れ、和菓子職人の友人にレシピ開発を依頼。試作を重ね、2007年頃からオンライン販売を開始した。

代表の福本眞一郎さん

おからクッキーの企画・広報を担当する高橋桃子さん。

販売開始後、おいしさは評判を呼び、売れ行きは順調だったが、割れやすさやカロリーの高さなど課題も。福本さんは油脂量を調整し、食感と低カロリーを両立させる改良を重ねた。
2010年代半ば、大手ネットショップのタイムセールに3時間だけ掲載したところ、なんと約1トンの注文が殺到。これを機に自社工房の設立を決意し、完全自社製造へ。ネットショップでは売上1位を記録した。
販路はネットにとどまらず、地元の百貨店やスーパーへも拡大。試食で購入する人も多く、リピート率は60%超。工房も移転・拡張を重ね、2025年9月現在、倉敷市児島に2つの工場を構え、月産約12トンの体制を整えている。

もともと「もとや」はアパレル販売から始まった会社。福本さんは「服は体型をキープできれば長く着られる。おからクッキーは、そんなお客さまたちの役に立てる商品だと思ったんです。今はおいしいものがたくさんある時代なので、つい食べ過ぎてしまう。倉敷おからクッキーは低カロリーで栄養もあるので、うまく取り入れて健康づくりに役立ててもらえたら嬉しいです」と語る。

ヘルシーだけじゃない
おいしさの追求

倉敷おからクッキーは、一枚一枚手焼きで製造されている。主な材料は、生おから、小麦粉に米粉をブレンドしたもの、粗糖、油脂。これに味ごとのフレーバーを加え、豊富なバリエーションを展開している。

特にこだわっているのが「生おから」。全体の約30%を占め、国産大豆を使った全国の豆腐店から仕入れている。中には米粉100%の商品もあり、もち米の米粉を使うことで、軽くサクッとした食感を実現。うるち米とは異なる風味が楽しめる。

「できるだけ添加物を使わず、体にやさしくておいしいものを届けたい」。そんな想いから、原材料は可能な限り地元・岡山産を使用し、地産地消にも貢献している。「倉敷」という商品名も、地域への想いから名づけた。

天板に敷き詰めらた「おからクッキー」が、次々と焼き上がる。

新商品の開発にも意欲的で、ユーグレナ入り、プロテイン入り、ビーガン対応、さらには犬用クッキーも展開。犬用は獣医師と連携し、通常より生おからの量を控えめにしている。
また、季節限定商品も好評で、春のサクラ、夏のナッツ、秋のイモ、冬のバニラ系など、アパレル出身の「もとや」らしく、季節感を大切にしたラインナップとなっている。

洋服を着替えるように、おからクッキーも季節とともにフレーバーを展開。

おからの個性と向き合う

販売開始当初は、知人の豆腐店から1tの生おからを仕入れて製造していたが、製造拡大に伴い、全国の豆腐店から複数仕入れる体制に。
豆腐店によっておからの味や質が異なるため、クッキーに合うかどうかを見極めながら、各豆腐店のおからを実際に使い、相性を確認しながら仕入先を選定してきた。
その努力が実を結び、全国豆腐連合会での紹介をきっかけに、岐阜県や東京都など、岡山県外の豆腐店からも声がかかるように。今では県内外の生おからを活用している。

取締役の高橋克彦(たかはし かつひこ)さんは、「生おからは日々水分量が異なり、製造が難しい」と語る。気候や製法によっても違いが出るため、スタッフが目視で状態を確認しながら、品質を維持している。
新商品開発では水分の多い食材との組み合わせが特に難しく、焼き上がりの調整には試行錯誤が必要だという。「タイマーではなく、目で焼き加減を見ながら仕上げる。毎日が挑戦です」と高橋さん。

「おからの認知度や賞味期限の問題もありますが、国内展開を強化しながら、海外展開も視野に入れていきたいです」と高橋さん。

全国に広がる販売網と、
地元・児島の直営店

倉敷おからクッキーは、オンライン販売のほか、百貨店・スーパー・コンビニでも取り扱いが広がっている。医療機関やスポーツジムでの導入実績もあり、そのヘルシーさが評価されている。
倉敷市児島には直営店舗が2つ。本店は商業施設「ショッピングコートPATIO」内にあり、自社で運営するアパレル店舗に併設。もう1店舗はジーンズストリート内にある。

PATIOにある本店のショップには、おからクッキーのほぼ全ラインアップが並び、直営カフェ「KOJI CAFE(コジカフェ)」も併設。「岡山ビーフカレー」や名物「えびめし」など、地元グルメが味わえる。

パティオの中にあるブティックとカフェ・ショップがひとつになった店舗のショーウィンドウ。

おからクッキーの全ラインアップが並ぶ。お試しサイズのミニクッキーなど選ぶのも楽しい。

特製カレーから岡山の名物えびめし、オムライスなど和洋食のランチセットが楽しめる。

KOJI CAFE一番人気の「スペシャルコンビセット」がこちら。

未来へつなぐ、
地域と伝統文化

今後の展望として福本さんは「各地の豆腐店とコラボしたおからクッキーを作ってみたい」と話す。豆腐店ごとの個性あるおからを活かし、その店の名前を冠した限定商品で、地元の魅力を伝えていきたいと考えている。

「がんばっている豆腐屋さんを応援したい。地域ごとの味を届けて、地産地消に貢献できたら」と福本さん。また、自身で豆腐をつくることも夢だという。おからへのこだわりを原点に、日本の伝統文化も次の世代へつなげていきたいと語る。
倉敷おからクッキーは、健康志向の商品であるだけでなく、地域や文化を未来につなげる力も秘めている。

(2025年7月取材)

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