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ふるさと文庫

#02

ふるさと文庫

BOOKS

『海の見える駅』

村松 拓 著 雷鳥社 刊

切符があれば、どんなひとでも行くことができる「徒歩0分の絶景」、それが「海の見える駅」だと著者・村松拓さんは言います。会社員として働く傍ら、そんな絶景を求めて旅を重ねてきた著者は、これまで300近くの海の見える駅を訪れたひと。長い海岸線を持つ日本には、約10,000の鉄道駅があるそうですから、全部でいったいいくつの絶景に出逢えるのでしょう。

「海の見える駅」と言っても、その表情はさまざまです。大都市にほど近い駅、1日に数本しか列車が停車しない無人駅、ほぉーとため息をつきたくなるガラス張りのモダンな駅舎、どこか懐かしい木造駅舎・・・。本書『海の見える駅』は、北から南まで、著者が自ら足を運び、その風景を存分に味わった中から、選りすぐりの70駅を紹介するガイドブックです。

ひとつひとつ丁寧に紹介される「海の見える駅」の中に、JR瀬戸大橋線・児島駅があります。国産ジーンズ発祥の地として知られる児島は、かつては瀬戸内海に浮かぶ島だったこと、ご存知でしたか? 近世に進められた干拓工事で江戸時代に本州と陸続きとなり、塩分に強い棉(ワタ)が干拓地で栽培されたことから繊維産業が発達、日本で最初の国産ジーンズ誕生へとつながっていきました。駅の窓口や自動改札の扉など、あらゆるところにジーンズ柄が施された現在の児島駅。土地の由来を知れば、海はどんな風に見えることでしょう。

豊富な写真と共に「海の見える駅」を紹介する本書には、旅の計画の立て方、切符の種類、おすすめの時間帯など、著者自身の体験から紡ぎ出される、ツボを押さえた旅のアドヴァイスも掲載されています。駅は単なる通過点ではなく、旅の目的地でもあるのです。

選書・文 スロウな本屋 小倉みゆき

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