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ふるさと文庫
#13
ふるさと文庫
BOOKS
『別冊太陽 六古窯を訪ねる』
平凡社 刊
やきもの。日々の暮らしにとけ込み、欠かせないものとして当たり前のように存在していますが、古くは縄文時代にまでさかのぼります。食糧の保存や調理等、生活用具として、また祭祀用具として使われ、この国の文化を築いてきました。
「六古窯(ろくこよう)」とは、古来からの陶磁器窯のうち、中世から現在まで生産が続く代表的な6つの産地、瀬戸・常滑・越前・信楽・丹波・備前のこと。この名称は、岡山県出身の陶磁学者・小山冨士夫(1900-1975年)によって、昭和30年代に提唱されました。本書『別冊太陽 六古窯を訪ねる』は、時を超えて守り続けられた日本の美を、丹念に取り上げる一冊。豊富な写真からは、やきものが持つ静かな迫力が立ちのぼってくるかのようです。
備前は、外の五古窯と異なり、唯一の「須恵器系」の陶器で、六古窯の中でも別格と言われています。釉薬を施さない備前焼は、土が命。田の底に層をなす「田土」を使用し、昔から「窯は売っても田は売るな」と言われたそう。水が濁らない、すり鉢を投げても割れない等の備前焼の特徴も、備前の土が持つ力でしょう。
それぞれの地で、六古窯を発掘・研究してきた人々がいました。古備前研究家・桂又三郎(1901-1986年)は、南方熊楠、柳田國男に師事して民俗学を学び、備前焼について多くの著書を残しています。写真家・土門拳(1909-1990年)も、備前に魅せられたひとりです。土、水、火の3要素から成り立つやきものを、土門はこう記しています。「それらはすべて偶然であり、人為のおよぶところではない。ぼくは、これを『天工』と呼んでいる。『人工』の対語としての意味もあるが、もっと大きな存在としての天然自然の生命力だと、ぼくは解釈している」
2017年、日本遺産に認定された六古窯。「風土と人々の暮らしから内発的にうまれた」やきものを考えることは、私たちの足元にある文化を見つめ直し、未来へと想像を巡らせるきっかけとなるはずです。
選書・文 スロウな本屋 小倉みゆき
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